スポーツがつなぐ飯南人のサラダボウル
安達 直之
「パァン」、シャトルを打つ音が響き、若者たちの歓声が聞こえてくるのは夕暮れに包まれた来島小学校体育館からだ。ここではバドミントンを通じた地域の若者の交流を目的としたサークルが活動している。それが、中山間バドミントン同好会だ。同会のメンバーは現在36人、毎回の参加人数は18人程度である。このサークルでは上手さを競い合うことよりも、スポーツを通じたコミュニケーションを楽しむことに主眼を置いていることが実際に参加してみてよく伝わってきた。
この会は約10年前に島根県中山間地域研究センターに当時在籍していた林晋平さんが立ち上げた。同会はもともと同センター職員の交流を目的としたものであり、参加メンバーは基本的に同センター職員のみで、毎回の参加人数は4~5人程度であった。しかし、昨年から安達代表が就任し、機会があれば地域の若者に声をかけ勧誘をしてきた。そして人が人を呼び、メンバーは順調に増えて今の36人となった。
なぜ、このような活動をするのか、安達代表は次のように答えた。「まず一つは単純に僕がいろんな人とスポーツをするのが好きだからです。社会人をやっているとスポーツをする機会がなかなかないので、なら自分でそういう機会をつくろうと思ったんです。ただ、それだけではありません。この町の若者は結構町外から来る人やUターンで帰ってきた若者が多いけれども、地域の人と接点が作れず孤独を感じる人も多いと聞き及びました。それなら、そういった人たちを取り残さない、ここ飯南町で暮らす仲間たちと繋がる足掛かりになるような場にする、ということも目標にしています。」
安達代表の言葉の通り、取材当日参加していたメンバー15人中、町外出身者は12人とほとんどを占めていた。この会に参加する理由として聞こえてくるのは「運動ができる」、「バドミントンが楽しい」という声で、体を動かすことを心から楽しんでいるようであった。さらに「同世代と話ができる」という声もあり、安達代表が目指す町外出身者のコミュニティとしての機能もできつつあるようだ。
メンバーは20代前半~30代前半の若者を中心として活動しているが、50代以降のベテランも在籍し活躍している。また、男女比も偏っておらず、インドネシア出身の方も参加しているなど、非常にバラエティに富んだメンバーが集っているというのが率直な感想だ。ここ飯南町に息づく個性豊かな飯南人が混ざり合いながらも、なおその個性を輝かせる。その様はあたかも、混ざりつつもなお素材の形や特徴を保ち続けるサラダのようだ。それならば、さしずめ来島小学校体育館はサラダボウル、シェフは安達代表といったところか。安達シェフがこの料理を今後どのように彩っていくのか、非常に楽しみだ。
【中山間バドミントン同好会(通称:サラダボウル)】
日時:毎週月曜日18:00~20:00(不定期で活動しない週あり)
場所:来島小学校体育館
連絡先:noyuki.adachi@gmail.com
安達代表のコメント:
僕たちは「スポーツを楽しむ」ということを目標に活動しています。バドミントンをメインにしていますが、バレーボールやバスケットボール、ドッヂボールなど小学生の時から慣れ親しんできたようなスポーツもやっています。私たち「サラダボウル」はどんな人種、国籍、年齢、性別の方も受け入れ、ともに歩んでいくことを誓います。あなたと素晴らしいメンバー達で素敵な時間を共有できる日を心待ちにしています。
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取材後記
この度は「スポーツがつなぐ飯南人のサラダボウル~来島小学校体育館~」をお読みいただきありがとうございました。
今回の記事を書くにあたって、僕が一番皆様に伝えたいことを考えた時に、「中山間バドミントン同好会」が一番に浮かんできました。これを記事にしようとした場合、一つ課題があるとすれば僕がこの会の代表であるということで、取材対象の選定が難しくなるということでした。しかし、その課題はメンバーの皆さんに取材するということで乗り越えることができ、加えてメンバーが普段どのような気持ちで参加をしてくれているのかを知るいい機会になりました。記事の構成上、代表の言葉を書く必要があり、表現の方法に迷いましたが、今回は自分が自分にインタビューするという形にしました。理由は客観的な表現の方が読者がスッと読めるのではないか、と考えたことと単純に面白いかなと思ったからです。今回の取材で、「中山間バドミントン同好会」というものが客観的にはどう見えるか、自分はどう考えているのかを見つめ直す良い機会となりました。
タイトルにも使用した「サラダボウル」という表現は、様々な民族が溶け込み混ざり合って多数派民族の文化に少数派民族が同化していく様を「人種のるつぼ」と例えられたアメリカが、公民権運動などを通じて、混ざり合いながらも少数派民族の個性や文化を尊重しあう多文化主義を「人種のサラダボウル」と例えてそのような社会を目指してきたことが由来となっています。ここ飯南町でも町外から移入してくる人が多いですが、そのような少数派の人々の価値観の違いなどを認め合いながら共に生きていきたいという願いから、今回の記事のタイトルに反映しました。
最後になりましたが、ローカルジャーナリスト養成講座関係者の皆様、このような記事を執筆する機会を与えていただいたこと、深く感謝申し上げます。

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