地域から生まれた新名所「じゃぶじゃぶ池」
コガスマコ
飯南町志津見にある『東三瓶フラワーバレー』
志津見ダムの上流にあるこの渓(たに)は、春はポピー、秋はコスモスが見所の花の渓だ。開花時に観光客が立ち寄るこの場所に、今年新しい名所が誕生し人気を博している。
その名も「じゃぶじゃぶ池」。山の湧水を引いた水遊びができる池で、近所の子供達だけでなく遠く出雲からも子連れ家族が遊びに来ている。
今年人気となった「じゃぶじゃぶ池」だが、実は以前からこの地にあった。名所となったきっかけは、志津見に住むIターン3年目の吉本さんの些細な気付きからだった。
渓の花畑管理を手伝っていた際、草むら脇の人工池にふと目が留まった。
「普段使っていない様子だけど、こんなに良い場所があるのか……」
池は「東三瓶フラワーバレー」でイベントが行われる際、やまめのつかみ取り場として使われていた場所だった。だが、イベント以外ではあまり使われることがなかった。
池を見た際に、ここを整備すれば地元の子供達が遊べる場所になり、新たな観光地にもなるのではないか、と感じたそうだ。
吉本さんは、近所で親しくしている小野田さんにその事を話した。
「いいね! じゃあ、皆で整備しようか」
小野田さんは、すぐにSNSで地域の人達に池掃除をしようと提案。気付きから一ヶ月も経たないうちに、地域住民で池の掃除や、池周りの草刈りをすることになった。
綺麗になった池のそばに「じゃぶじゃぶ池」と描かれた手作り看板を立てた。看板に載せる注意事項の文言は、SNS上で地域の皆と相談し決めた。
日陰のない池のほとりに日よけテントを立て、来た人に楽しく遊んでもらおうと水鉄砲やボールを置き、案山子(かかし)も立てた。
飯南町役場では地域担当の大江さんが、Googleマップに池を登録しラジオに情報を流す。吉本さんもSNSやタウン情報誌に情報を載せた。
すると、地元の子供たちだけでなく、次第に出雲や広島から家族連れが水遊びに来るようになってきた。
こうやって『じゃぶじゃぶ池』は新名所になっていった。
驚くべきことは、吉本さんの気づきから二、三ヶ月間で行われたことである。些細な気付きから地域の人たちが動き始め、放置されていた池を整え、人を呼ぶ名所へと進化していった。
それも、和気あいあいと楽しそうに。
「フラワーバレーやダム辺りにさ、遊び場をもっと増やしたいね」
次はどんなことをしようか、と小野田さんたちは笑顔で話している。その楽しげな姿からは、自分達が住む地域への愛を感じた。
次なる名所が生まれる日も、そう遠くないのかもしれない。
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取材後記
今回の記事内容は、私自身が住んでいる地域内で起こったことでした。
この夏、面白い場所ができたことを知り、講座を受講しはじめの頃は「じゃぶじゃぶ池」という「モノ」に焦点を当てた記事にしようと考えていました。
でも、池のために動いた人たちのことを見聞きするうちに、池に関わった「ヒト」たちの方に面白さを感じ、今回記事にする運びとなりました。
取材で小野田さんと吉本さんにお話を伺ったのですが、二人の言葉や様子から志津見への愛やワクワク感を強く感じられたのが印象的でした。そのあたりが伝わる記事になっていればいいなぁ、と思います。

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